最近たまたま、テレビアニメ「サザエさん」を見たら、まだ、「セル」(セル画)、「ハンドトレス」(機械でなく、1枚1枚ペンで、セルに絵を写し取る事)、「フイルム」(フイルム撮影)で制作されていました。
ほとんどのアニメがデジタル化された中、セルとフイルムで育ってきた私は、個人的に、いつもまでもこのまま、昔の制作スタイルでがんばってほしいなあと思います。
私が、アニメの仕事を始めた頃、「サザエさん」の、「横顔の口パク」(口だけをパクパク動かす事)のやり方が解らず、不思議でなりませんでした。
まわりの人に聞いても解りませんでした。
普通、同じ絵を、手で、1枚1枚トレスすると、動かした時、どんなに丁寧にトレスしても、どこかが「ガタガタ」とズレて動いてしまいます。
セルの転写に機械を使うようになってからは、「合成」と言われる方法で「横顔の口パク」などを処理してきました。
口など、「動く部分」は別に描き、「動かない部分」と合わせて、合計2回複写するのです。
この方法だと、「同じ絵の部分」の複製は、機械ですから、何回複写しても、ズレない訳です。
現在は、デジタル化され、もっと複雑な合成も、パソコン上で簡単にできるようになりました。
ところが、ハンドトレスで、どうやって「合成」しているのか。「サザエさん」は、本当に謎でした。
昔は、保田道世さんをはじめ、同じ絵を何枚トレスしても、まったくガタガタとズレない、正確で緻密な腕を持った職人さんがたくさんいたらしいですが、「サザエさん」のようなテレビシリーズの大量の口パクを、そういう方法で描いているとは思えませんでした。
しばらくたって、「サザエさん」の原画をやっている映産労の先輩にお聞きする機会がありました。
そうしたら、図のように、Aセル、Bセルと、2枚のセルを重ねているという事でした。
しかし、その場合も、Aセルの「頭部分の色トレス線」が、Bセルの「頭のりんかく線」をはみ出てはいけないので、仕上(彩色)担当者は細心の注意が必要になります。
この種明かしを聞いたのは、もう20年以上前なので、もしかしたら、今は違う方法をとっているかもしれません。
しかし、この「サザエさん」の「口パク合成」ほど、仕掛けが解らなかった物はありません。
人間の手作業の技術というのは、時として素晴らしいマジックを実現させるものだと思いました。(h)