下請合理化政策と主婦の内職 その2
“仕上げ”の通信教育
民話社は、1968年に発足し、港区青山でアニメ技術者の通信教育をはじめます。演出やアニメーターの養成コースもあるのですが、もっとも力を入れたのがトレスやペイントの技術養成の仕上げコースでした。
主婦がターゲット
民話者の当時のテキストの一頁には、主婦と思われる女性が家庭で楽しくペイントする作業風景が紹介されています。また、2頁~4頁までは「あなたによういしていただくもの」として、タップ、セル、アニメ・カラー、ペン先とペン軸、ふで、ひっせん、スポンジ、かくはん棒、ガーゼ、修正へら、手袋、トレス台、の12種類の道具を紹介し、「ご希望の方は民話社編集部まで」とあります。教材には「アタック№1」や「サザエさん」などのキャラクターがあり、根気よく予定のコースを修了すれば、いかにもテレビの仕事に参加できると思い込むような仕組みになっています。
ところが、テレビ番組などの仕上げの実態は、受けたら数日で仕上げてセル画を納品しなければなりません。プロダクションの目の届かない地方の主婦に、郵送で仕事を発注できる見込みが最初からないのに、全国を対象に受講者を募集するのですから、この通信教育はあくどい商法いわざるを得ません。
「予定のコースを終えたのだが、仕事を紹介してくれない」との相談が、次第に映産労にも寄せられるようになりました。映産労は、その相談に乗る中でこのテキストなどを手に入れたのですが、結局、この民話社は74年に倒産します。(つづく)