テレビ朝日「スティッチ」の謎 制作スタッフ・キャストのテロップが徐々に消えていったのはなぜ？

「民放キー局への要請行動2010」

私たち映産労と、映演共闘、映演アニメユニオン他、映画、演劇、アニメ、舞台美術、テレビ局などの他の労働組合は、お互い協力しあい、約20年という長い年月をかけて、放送局との定期的な交渉の場を実現化させてきました。
スタート当初は門前払いをする局もありましたが、近年では、お互い交渉のテーブル上で、現在のアニメーション、テレビ、舞台美術等の問題点を話し合う事ができるようになりました。
長年続いたこの話し合いの場を途絶えさせてはいけないと、今も、毎年、春と秋にこの行動を行っています。

３月10日・11日にも、テレビ東京、テレビ朝日、フジテレビ、TBS、日本テレビ、および民放連に、アニメーション制作単価の引き上げ、法に見合った労働条件の改善等、様々な要望書を各局に出向き、申し入れました。
また、様々な問題点を、製作委員会まかせにせず、テレビ局としても、放送の当事者である責任を重視し、今後も、注意・監督していくようにと、現場のスタッフから出された要望を、参加者が局側に伝えました。


「テレビアニメーションスタッフのテロップ表示の問題」

テレビ朝日で現在放送中のアニメ「スティッチ！～いたずらエイリアンの大冒険～」（製作：ウォルト・ディズニー・インターナショナル・ジャパン株式会社）で、１話は、エンディングがあり、全パートのスタッフ名が表示されたのですが、２話から、エンディングがなくなり、ラストの小エピソードの上に、「原画、動画、背景、仕上などアニメの要ともいえるスタッフが削除された形」で、横ロールで、オンエアされました。（アナログ地上波放送で確認）。

2010年３月２日、再びオンエアをチェックしたら、その横ロールごと無くなっていました。
ようするに、オープニングでメインスタッフのみ表示されますが、各話のスタッフキャスト全員の個人名がオンエア（社会的な記録・情報表示）からカットされている訳です。

参加スタッフにたずねてもあいまいな説明しかなかったと聞きます。
さらに、テレビ朝日「スティッチ」公式ホームページの「スタッフキャスト」のページには、メインの声優数名と、主題歌のタイトルと歌唱グループ名のみで、制作にかかわっている日本スタッフの名前はどこにもありません。（2010年３月２日現在）

かつて、テレビ朝日で放映された国民的人気アニメ「ドラえもん」も、ビデオ化された時、アニメーターやペインターの個人名がカットされました。（10年前くらい）
また、現在では他にも、アニメーション作業の要とも言える作画・背景・仕上のスタッフ名を表示しない作品が見られます。

「スティッチ」はディズニー製作で、アメリカは契約には厳しい国ときいています。また、日本では、アニメーションの仕事に参加する際、事前に契約書を交わす法律が施行されたと聞きますが、スティッチをはじめ、多くのアニメーション作品は、相変わらず、電話による口約束だけで、毎回仕事をし、中には仕事が終わった頃にギャランティが決まる、といったケースもあります。

アニメーションというのは、多くのスタッフ１人１人の力で（しかも日本では法外な労働条件で）出来ており、また、スティッチやディズニー作品は子供にも大きな影響を与えている作品なのに「テレビで名前を載せる、あるいは削除する」この基準をいったいどこに置いているのでしょうか。

（※個人的に気なるという方は、各局のテレビ局のＨＰから、視聴者の意見・要望のメールを送信する事ができます。）

アニメーションのテレビシリーズ等におけるテロップの問題は、昨年のこの「テレビ朝日・スティッチ」問題から、徐々に組合内で話題になっていきました。
参加スタッフのテロップは放送するようにと、十数年前から要望書には記載されていますが、今回は特に、各局に対し、さらなる注意と配慮（該当局には調査と改善）を申し入れました。


「アニメ番組の映像効果に関する製作ガイドライン」

３月11日、テレビ東京での申し入れの席上で、放送における安全や子供の影響等が話題になりました。
近年では、いわゆるポケモン事件の記憶も薄れ、危機感が風化しつつあるのではないか、また、アバター等の３Ｄがテレビに導入された場合、その子供への安全性は？
1977年、日本テレビ系列で放送された立体アニメーション「家なき子」で、立体視や特殊めがねの使用が子供に影響を及ぼすのではないかと視聴者から指摘され、シリーズ後半から立体視のシーンを減らした、など、過去の経験や事例なども忘れずに、慎重に取り組むべきだとの発言が参加者から出されました。
また、いわゆるガイドラインを、局からは各製作会社やプロデューサーに対して、末端のスタッフまで配布するように言っているが、現場にいる人の中には、まだ見た事がない人がいる、という事が問題となりました。
テレビ東京と、労働組合側は、引き続き、各製作（制作）会社は、ガイドラインの存在を全スタッフに通知するべきだと話し合いました。（ア点）

・ＮＨＫと日本民間放送連盟によるアニメーション等の映像手法について
http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/060831-002.html

・テレビ東京によるアニメ番組の映像効果に関する製作ガイドライン
http://www.tv-tokyo.co.jp/kouhou/guidelines.htm

・著作権法　第十九条（氏名表示権）
著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。

・放送法　第１章　総則　（目的）
第１条　この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
3．放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。