音楽の私的違法ダウンロード者を処罰する法律案

8月、自民党の文部科学部会・総務部会・法務部会・合同会議で、議員立法「音楽などの私的違法ダウンロードの防止に関する法律」が取り上げられたことが、自民党議員のブログやツイッターなどで明らかになりました。この法律の主な内容は、

１：音楽の私的違法ダウンロードを処罰する規定を整備
２：音楽の私的違法ダウンロードした有償著作物の公衆への提供防止措置の努力義務規定

インターネット上に違法アップロードされた音楽を、ダウンロードした者を処罰できる法律のようです。

この種の考え方、つまり素材をアップロードした者より、ダウンロードした者の処罰を強調、という概念は、さまざまなインターネットや放送の規制につながる法律改定、児童ポルノの単純所持処罰、また2010年に改定された著作権法（違法アップロードされた動画をダウンロードした者が違法となる部分が追加となった。ただし罰則はなし）、など、一連の規制の概念にも共通しています。

大企業の利益に貢献し、損失を防ぐための法律、もしくは、国民の表現・言論・情報伝達の一部を規制し、国民に潜在的罪悪感を与え、行動範囲を間接的に萎縮させる法律案は、矢継ぎ早に、次々誕生します。1971年の大企業主導ともいえる著作権法（映画部分）改定などもその一線上にあるといえます。しかし、国民（個人）の利益となる法律案（違法労働を是正したり、サービス残業を法的に規制する法律、国民が請願している各法案など）は、なかなか実現しません。

これは戦後（特に1980年以降）、企業献金を媒介にした、長い保守与党政治と、経済界の密接なつながりの中で成長してきた基本姿勢で、特に2000年以降、それまで比較的自由に表現・活動してきた芸能・文化の分野（映像・映画・漫画・アニメーション・演劇など）に国の関与が及びました。

映像や音楽を実際に制作している現場の環境（音楽でいえば実演家などの権利やロイヤリティ）よりも、企業に納められた、政府・国で定義するところの知的財産（複製や二次利用により膨大な利益を生むもの。国ではコンテンツなどと呼称）の利益確保のための法律が次々できたわけです。

違法ダウンロードをした者の処罰することにより、法務部などを持つ大企業の利益は保護されますが、法的処置を実行する余裕の持てない個人の作家やクリエイターの権利などは、同じ著作物・知的財産であっても事実上放置されます。企業のメリットのみが残ります。動画や音楽の違法アップロードや児童ポルノなどは現行法だけで十分に取り締まれます。

「音楽などの私的違法ダウンロードを処罰する法律案」については、自民党・山本一太氏の8月26日のツイッターによると、「平場の議論を２回（？）やっただけで自民党の関係部会を通過したこの法律案は、出席者から慎重意見が相次いだため」自民党の部会上の政策会議でブレーキがかかったそうです。
山本氏は「違法ダウンロード対策の必要性は分かるが、もっと時間をかけて議論すべき問題だ」と同ツイッターで述べています。自民党議員のブログやツイッターを見回してみると、早期に国会処理させたい意見と、慎重論の２つがあるようです。

各政党・政治家には、国民・個人の利益、真の知的財産保護につながるような法律作りを、企業には、国民・個人の共益につながる企業努力と、すべての人の権利を侵害しないシステム考案を優先してほしいとおもいます。また、インターネットが完全に規制されていない現在、政府や国の動きを、国民がしっかりチェックしていくことが必要であるとおもいます。（ア点）


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