アニメーターが適用除外されている最低賃金について

昨年～今年のだいたいの流れ

「最低賃金」とは、会社など使用者（経営者など）が労働者に支払わなければならない賃金の最低額です。
厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会（中賃審）」が決めた目安をもとに、全国47都道府県の審議会ごとに決定されます。違反した使用者（経営者など）には罰金が科せられます。

2010年度では、最低賃金（時給）の引き上げ目安を、全国平均で15円と決め、全国平均730円とわずかに上昇しました。

2011年度は、東日本大震災などの影響もあったためか、審議会は、最低賃金の引き上げ目安額を全国加重平均で６円と決めました。
現在、あいついで、各都道府県から答申が出され（発表され）、中央の目安より1～4円上回る答申も見受けられます。

東京では、8月5日、東京地方最低賃金審議会が最低賃金を10月1日から16円引き上げ、時間額837円に改定するとの答申を行いました。

しかし、欧米諸国では、時給1000円以上が当たり前になっており、まだまだ程遠い金額です。


最低賃金法　なぜ自分には適応されないの？

商業アニメーション界についていえば、使用者や企業から「労働者ではなく、業務委託、請負である」と申し渡された時、これを受諾してしまうと、アニメーターらは、最低賃金の制度や法律から除外されてしまいます。この問題は近年、一般の仕事の中で大きく広がっています。アニメの制作進行の場合などは、表向きに社員扱いになっていますが、最低賃金は守られているでしょうか。
「コンビ二のアルバイトより収入が低い」と言われてきた業界ですから、アニメーターも制作進行も、時給換算にして約800円を支払われたら、現在より収入は何倍も良くなるのではないでしょうか。
アニメ製作・企業側は、余分なお金を労働者に払いたくない、あるいは制作費が安すぎて払えないため、商業アニメの制作現場に働く人達に対し「業務委託、請負である」と宣言するようになったのです。

このように商業アニメに限らず、働く人の生活を困窮させる一連の流れを、人物資・心理両面で公然と後押ししてきたのが、政府の自由化・規制緩和・非正規化など一連の推進政策です。そしてこれを後押してきたのが経済界です。
1980年代から、借金を作った政府の責任は棚上げしたまま、財政再建の名の下に、政府自体を企業化（経済界と一体化）させ、謝金返済どころか、巨額の無駄遣いと、過剰消費（浪費）を推し進めてきました。
電話、交通、電気、郵便、さまざまなライフラインが企業化され、1986年以降は、労働者派遣法も改定、それまで派遣が禁止されていた製造業や医療などにも派遣が認められるようになりました。以後、非正規雇用は年々急増。貧困格差、ワーキングプア、偽装請負の原因にもなっています。
無駄遣いといえば、2006～2010年、政府による原子力安全神話の推進広報には「358億円」もの税金が投入されています。

この一連の流れ（勢力）は、働くすべての人に最低賃金を払う必要はないと考えています。企業献金が政党や議員（一部を除く）に毎年支払われているため、国民の生活より、経済界の利益の方を優先してしまうのです。利権が生じることにより大手メディア・報道のタブーが生まれ、多くの一般市民の意識・自主性にさまざまな潜在的影響を与えます。

働いたら働いた分だけ、賃金がごまかされずにしっかりと支払われる社会、それが民主主義であり、子供にも自慢できる本当のビジネスではないでしょうか。43年間、いまだにアニメの原稿（画稿）とも言える動画の単価が１枚平均190円というのは、明らかに民主主義、社会のルール、そしてフェアーなビジネスから逸脱しているようにおもいます。