by anirepo
検索
記事ランキング
画像一覧
アニメレポートとは
映産労(映像文化関連産業労働組合/旧:日本映画放送産業労働組合)は、1965年に結成された労働組合法にもとづく個人加盟(オープンショップ)の労働組合で、映像・文化関連の仕事で働く人なら誰でも加入できました。2019年1月に高齢化その他の理由により、解散となり、現在は、元組合員OB有志が研究団体と情報発信の場として継続しています。
1960年代、ガリ版刷りのペラのレポート発行に始まり、1975年には、不定期の「アニメれぽーと」(B5版冊子)が初めて発行。商業アニメーションの現場で働く、オープンショップ組合員たちの手によって発行された、日本ではじめての本格的・小冊子の登場でした。 制作現場の実態を、誰にもわかりやすく伝え、改善の手立てにする目的で、発行は1980年代の半ばまで続きました。多くのアニメ研究が政治の問題をタブー視するなか、アニメ現場の問題点は政治問題と繋がっているという視点を外さず、勉強会や様々な活動を続けました。その後、編集体制を維持できず、「アニメれぽーと」は休刊となりましたが。2005年、インターネット版として「アニメレポート」(当ウエブログ)を復刊。非営利・学習・研究目的により運営開始。「ネット版アニメレポート」は、映産労・旧アニメ対策委員会の公式ページでした。 現在はアニメより緊急な命や生活に関わる問題の情報を優先掲載しています。 This page is blog of "Eisanro".In Japan. We are open shop's labor unions of a movie, television, animation, and a culture industry. -Anime Report Japan- ★連絡先(Contact): ブログ管理人(アニメレポート編集部員有志)mall: minosiwa☆gmail.com (☆を@に変えてください) ※マナー違反の書き込みが多いのでコメントやトラックバック機能は休止中です。 ★リンク 地震があったらまず確認 ●福島第一原発ライブカメラ 労働組合(友誼) ●映画演劇アニメーションユニオン ●映画演劇労働組合連合会(映演労連) ●映演共闘 ●日本民間放送労働組合連合会(民放労連) ●全国労働組合総連合(全労連) 映像関連ガイドライン ●NHKと日本民間放送連盟によるアニメーション等の映像手法について ●テレビ東京によるアニメ番組の映像効果に関する製作ガイドライン ●放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン アニメーション団体(友誼) ●アニメーションミュージアムの会公式ホームページ ●NPOアニメーションミュージアムの会公式ブログ 労働関連 ●首都圏青年ユニオン ●首都圏大学非常勤講師組合 ●フリーター全般労働組合 ●ユニオンチューブ ●国公労連 ●エキタス 原発事故・放射能関連 ●CNIC 原子力資料情報室 ●さようなら原発1000万人アクション ●首都圏反原発連合 ●みんな楽しくHappy♡がいい♪ ●たんぽぽ舎 ●子どもの安全な場所での教育を求める 福島集団疎開裁判 ●パパママぼくの脱原発ウォーク ●日本の大気拡散予報(日本語スイスサイト) ●Upcoming events(世界の脱原発行動の情報ページ) ●新・全国の放射能情報一覧 ●FukurouFoeTV ●SAFLAN-TV 独立メディア ●I W J ●OurPlanet-TV ●IWJ・English 3.11 chronicle ●fotgazet ●8bitnews ●田中龍作ジャーナル ●レイバーネット日本 ●民の声新聞 ●ラジオフォーラム ●デモクラTV ●デモクラシー・ナウ! ●マガジン9 ●リテラ ●弁護士ドットコム ●News for the People in Japan(NPJ) 新聞・雑誌・ニュース ●東京新聞 ●しんぶん赤旗 ●週刊金曜日 ●琉球新報 ●沖縄タイムス ●BIG ISSUE ●DAYS JAPAN. 市民組織 ●グリーンピース ●シャプラニール ●食の安全・監視市民委員会 ●市民科学研究室 ●ヒューマンライツ・ナウ ●パレスチナ情報センター ●明日の自由を守る若手弁護士の会 ●国境なき医師団 ●STOP秘密保護法大集会・実行委員会 ●のりこえねっと ●武器輸出反対ネットワーク:NAJAT ●C.R.A.C. ●TQC 海外メディア ●アルジャジーラ ●ハンギョレ ●ロイター ●CNN ●AFP ●ウォー・リークス 食事・お酒 ●ビア&カフェBERG 憲法・法律 ●放送法 ●著作権法 ●労働基準法 ●労働組合法 ●下請法 ●日本国憲法 ●世界人権宣言 ●国際人権規約 ●人種差別撤廃国際条約 TPP・ACTA・著作権・表現規制・マイナンバー ●そうだったのか!TPP ●アジア太平洋資料センター:PARC ●project99% ●自治体情報政策研究所 ●漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 地震・災害情報 ●気象庁・地震情報 ●Japan Earthquakes 出版 ●合同出版 安保・大学・研究団体 ● 安全保障関連法に反対する学者の会 ●安保法制と憲法を考える首都圏大学・市民有志連絡会 ●リデモス ●軍学共同反対連絡会 ●安保関連法に反対するママの会 ●解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会 ※全国に点在する映産労の組合員の皆さんへ ・身のまわりのニュースや情報を編集部あてに送ってください。ネット版アニメレポート掲載用の記事もお待ちしています。メールで可。 ※「アニメーション」とは…ラテン語のアニマを語源とする仏・英語。生気,活発,活気,快活,元気などの意味があり、のちに映像用語としての意味がつけ加えられる。「アニメ」は、日本におけるアニメーションの略称で、フランス語のアニメとは異なる。英仏圏以外の国での発音は「アニマシオン」など多種が存在する。(アニマの語源はインド‐ヨーロッパ語族の「ane-」=呼吸)。 カテゴリ
全体 アニメ制作現場の窮状 制作現場で起きている事 お 知 ら せ 最近の出来事から アニメ制作体制の変遷 アニメの知識 昔のアニメれぽーとから コラム 編集だより 組合だより 沖縄・米軍基地・軍事 戦前・戦中・戦後・歴史 自殺・貧困・不登校・いじめ スクラップ・アーカイブ・報道 書 籍 休憩室 著作権・知財・表現・クールジャパン 原発事故・被曝・核 雇用・請負・労働・教育 他労組・組合の活動 秘密保護法 政府の戦争参加・推進 抗議・集会・デモ・カウンター 選挙・政治・国会・汚職 海外・紛争・外交・経済 映像・映画・音楽 医療・福祉・育児・教育 自然・環境 食の安全 人権・差別・暴力・LGBTQ 東京五輪・リニア・カジノ 重要資料集 共謀罪 大地震・大災害 憲法改定 Stop Genocide 未分類 以前の記事
2024年 11月 2024年 10月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2023年 06月 2023年 05月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 07月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2020年 06月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 04月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 01月 2009年 09月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 06月 2008年 04月 2008年 01月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 10月 2006年 07月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 |
毎年行なわれるテレビ東京と労働組合側の懇談(制作改善の要請行動)の中で、たびたび「ポケモン事件」の、歳月の経過にともなう風化が問題になります。
もういちどここで当時のことを振り返ってみたいと思います。(資料提供と執筆協力は研究家の岸野さん、BCAAPの皆さんによるものです) ポケモン・ショック 1997年12月16日、テレビ東京系で放送されていたテレビアニメ「ポケットモンスター」38話を見ていた視聴者が光過敏性発作などを引き起こして、次々に病院に搬送されるという事件が起こりました。大半は子供で、700人以上が病院に搬送され、100人以上が入院しました。18日付けの警視庁のまとめでは30都道府県で体調不良708人以上、入院者は130人と発表しています。 テレビ東京はじめ、製作会社、スポンサーの任天堂などは、原因が解明されるまで、ポケットモンスター、いわゆるポケモンの放映を急きょ中止し、ビデオレンタルの自粛を要請しました。すぐに全37局で放映が休止されました。 また、関係諸団体、テレビや新聞のニュースは、その話数を録画していても絶対見ないように、繰り返し注意を呼びかけました。 しかし見るなといわれると見たくなるというのが人間の心理のようです。その話数が逆に有名になってしまい、怖いもの見たさで、録画したビデオの貸し借りを含め、その話数を見た視聴者が、再び倒れて、病院に搬送される事件も起こりました。その中には大人も混じっていました。 この時期、テレビや新聞などには、「ポケモンショック」「ポケモンパニック」などの極太ゴチックの活字が次々並びました。 原因は当初わかりませんでしたが、専門家や関係者が調べた所、どうやら、本編中に長時間多用されていた光の点滅が原因ではないかという事がわかってきました。特に透過光(実際の光をフィルムで撮影)とよばれる撮影法による、赤と青、交互の点滅(通称:パカパカ)が多用されていた事が問題になりました。 ポケモンが放送休止になり、テレビ東京の視聴者センターには、700件もの番組続行を願う意見が寄せられました。 ポケモン休止後、テレビ東京では、同枠で、同局「おはようスタジオ」で放送されているギャグアニメ「学級王ヤマザキ」からパカパカ部分を削除して放送する事になりました。 同時に、過去、別の番組で、光の点滅や激しいフラッシュ効果で、視聴者等が体調不良を訴えていたケースも、これに合わせクローズアップされました。 その一つが、1997年3月29日、NHKで放送されたテレビ・アニメーション「YAT安心!宇宙旅行」(NHK教育、毎週土曜日18:00~/制作/著作:NHK・NHKエンタープライズ21)の第25話で、この番組を見ていた25人が体調不良で病院に運ばれました。激しい赤と白の点滅シーンがあったといいます。 当初、医師側からは当初4件の被害報告がありましたが、この時、NHKでは、事実を公表しませんでした。その理由は、当時のNHK二宮文彦・番組制作局制作主幹によれば「当時、静岡県の医師から通報があった時は、よくわからなかったのが実情です」とコメントを述べています。 NHKは、ポケモンの事件発覚後に、レンタルビデオ店などからビデオを回収、問題のシーンを差し替えました。 また、事件後、NHKが番組を通じて、情報を寄せてもらうように呼びかけたところ、9件の被害届がありました。 また1993年にテレビゲームの光刺激でけいれんを起こした事例も再報道されました。すでにゲームでは健康上の注意として強い光刺激や点滅の繰り返しで、筋肉のけいれん、意識喪失の症状を起こす人がいると記載されており、ポケモンの携帯用ゲームを発売している任天堂では、プログラムの段階から内部マニュアルを通じて気をつけていたといいます。 また、この事件によって、テレビの大型化、デジタルや液晶画面化で、コントラストが強く、画質がシャープになり、色彩が強くなった事、さらに、核家族化や、両親の共働きが増え、夕方、子供が一人で部屋の電気もつけず、大きいテレビ画面の前に釘付けになって見る、など、家庭環境の変化も注目されるようになりました。 現在、テレビアニメーション放送前に、「部屋を明るくしてテレビから離れて見ましょう」という旨のテロップが入るようになったのは、このポケモン事件がきっかけです。 局や諸団体、政府の動き ポケモン事件後、関係諸団体、(厚生省、郵政省、NHK、日本民間放送連盟(民放連))などは、研究班や対策会議などを設置する方向に向かいます。 1997年12月17日、郵政省は、テレビ東京の常務を呼び事情聴取し、放送法に違反する行為があれば必要な措置を取ると述べています。郵政省は、1995年7月、報道番組中にサブリミナル的手法を用いたTBSを厳重注意処分しています。 同17日、テレビ東京は外部の精神医もメンバーに入れた「ポケットモンスターに関する調査チーム」(座長・金沢竜一郎制作専任局長)を発足させ、同番組の放送中止を発表しました。 NHKは「アニメーション問題等検討プロジェクト」を、民放連も放送基準審議会内に、アニメーション問題プロジェクトチームを発足させました。 日本てんかん協会は、光過敏てんかんは、てんかんの中でもまれであるので、すぐにてんかんに結びつけず、事態を正確に判断し正しい報道をとコメントしました。 さらに同17日、「テレビゲームと発作についての研究会(ESGSの会)」が記者会見を開き、番組中のフリッカーについてあらためて言及しました。会見に出席した、岡山医大・小児神経科、八乙女クリニック、国立療養所静岡東病院、埼玉医科大精神神経学教室のメンバーらによれば「約4000人に1人が光に敏感な素因を持っていて、過敏性のピークは12歳~14歳で女性が3分の2を占めていて、1秒間に15回前後の点滅や赤い光には注意が必要、今後も症例を医学的に検討する、また、そういう素因を持っている人は映像刺激を避ける事が大事と述べました。 1997年12月19日、タイのラキアット保健相は、日本のポケモン事件を受けて、「ポケモン」のタイ国内への輸入禁止をタイ政府に求めた事を発表しました。同保健相によると、タイ国内には、てんかん患者が約5万人いて、すでにゲームなどで子供に人気のあるポケモンの放映による二次被害を防ぎたいという意向を述べました。 同19日、テレビ東京ポケモン局内調査班「ポケットモンスターに関する調査チーム」の初会合が開かれ、問題となった38話を視聴しました。岩田圭介プロデューサーは、医師の見解等も総合し、放映時間午後6時51分34秒~38秒が疑わしいと発表しました。この問題の4秒間には、猛スピードで画面が入れ替わる「パカパカ」という手法が用いられ、赤、青、白、黒の4色が、4秒回で100回も入れ替わっていました。 またこの日、政府も調査に乗り出す事になりました。19日、小泉純一郎厚相(当時)は閣議後の記者会見で「洗脳に近いような症状なのか」と発言しています。自見庄三郎郵政相(当時)も、閣議後の記者会見で、「放送と視聴覚機能に関する検討会」を郵政省内に設置したと発表しました。同検討会には、工学、心理学、医学、放送制作の専門家10~15人で構成されたといいます。 参院逓信委員会も、19日に行なわれた理事懇談会で、今後、テレビ東京やNHK、民放連などを参考人として逓信委員会に呼ぶと発表しました。 関係団体はその後、厚生省所管・国立療養所久里浜病院(現・厚生労働省所管・独立行政法人国立病院機構久里浜アルコ-ル症センタ-)に調査を依頼したとも聞いています。 郵政省は点滅画像などにより視聴者が発作を起こすなどして、画像規制しているイギリスに職員を派遣。イギリス独立テレビジョン委員会(Independent Television Commission/ITC)では1994年11月に規制を定めています。その中には、激しい光点滅のほか、縞模様、渦巻き、模様状画像、画像移動や明滅などについても定められています。 さらに同19日、民放連の氏家斉一郎会長(当時)、NHK・海老沢勝二会長(当時)は、「アニメーション番組に関するNHK・民放連の検討会」を設置、構成メンバーは、NHKから田畑和宏理事ら3人、民放連からは、岡哲男テレビ東京専務ら3人の計6人で構成されたとの事です。 ガイドラインの作成とハービングマシンの設置 やがて、NHKと民放連は、激しい光点滅などを禁じた、アニメーション映像効果への具体的な製作チェック手法(いわゆるガイドライン、俗してポケモン規制)を発表、放送当事者であったテレビ東京は、さらにそれよりも厳しいガイドラインを制定し、発表しました。 このガイドラインは、イギリス独立テレビジョン委員会の基準を土台にした上に、前述の医療研究機関の見解を重ね合わせた物のようです。 また、放映前の人間によるチェックだけでなく、各局で、アニメ画像フリッカー解析計測機:ハービングマシン(harbing machine:棘波検出器)など、器械を使った画面点検、点滅や激しい描写の自動検出が併用される事になりました。 また現在、現像所や編集室で行われる、VTR編集(放送局に納品する、βCAM、デジタルβCAM、HDD、HDD-CAMなどによる放送マスター編集作業)中に、ガイドラインやハービングマシンに引っかかると判断された表現や描写は、プロデューサーや編集マンなど、立ち会った人達が話し合い、ディレイをかけたり、画面をぼかしたり、コントラストや彩度を落とすなどして調整しています。 こうして、アニメーション制作時、作品中の光の点滅等は、あらかじめガイドラインに抵触しないよう、注意して制作されるようになりました。 しかし同時に、急激な場面転換や、カット繋ぎなど、映画の芸術性を構成する、基本的な映像表現の一部までも、同時に規制の対象となりました。当時、アニメーション事業者協会副会長であった野田拓実氏は、将来的にアニメーション表現の可能性が規制されていく事につながるのではないかと、懸念するコメントを新聞等で述べています。また、もしテレビ局や製作会社から、現場に作り直しを指示された場合、ただでさえ法外に安い制作費で多くのアニメーション中小企業の経営や、労働者の生活が貧窮しているのに、その作り直しの費用は誰が捻出するのか、などの不安も各所より出されました。 NHKのNHK二宮文彦・番組制作局制作主幹(当時)は、「アニメならではの世界を描く事より、刺激やテンポの速さで視聴者の目を引きつける事に作り手の気持ちがいっていなかったか」と、現場に対する反省点を述べています。 現場やテレビアニメーションの労働組合などは、「視聴率第一主義と同時に、テレビアニメの制作費が極端に安く抑えられており、少ない枚数で子供を引きつける為には、刺激的な場面にせざるえを得ない」と発言、各所で、市民団体や関係者による集会や勉強会などが自主的に開かれました。 1998年3月16日、アニメーションの現場に公開された、フリッカーや点滅の検出器「ハービングマシン」 ポケモン事件以降 ガイドラインは文書化され、各現場に配布されるべきと思いますが、制作会社や担当プロデューサーによって対応はまちまちで、現場の大半のスタッフがそのガイドライン自体、見ていない事がわかりました。 また、テレビアニメーションだけが規制の対象であり、実写、CM、ライブやイベント、ステージなどでの激しい照明は対象外となるのを問題視する声もありました。 1998年3月16日、アニメーションの制作会社が密集する練馬区で、NHK、民放連、映画テレビアニメーション関連の労働組合、経営者、現場で働くスタッフを交えた、説明懇談会が開催されました。 しかし、テレビアニメーションの劣悪なスケジュールに追われる現場のスタッフは、ほとんど、その会の開催を知らず、また、知っていても参加できない人がほとんどで、その時の参加人数は、20名弱程度でした。 今まで誰も見た事がない、「アニメ画像フリッカー解析計測機:ハービングマシン」は、この時はじめて、参加者に公開され、フリッカー検出の瞬間も実演されました。 現場でガイドラインが手に入らないスタッフから、さらなる配布を求める質問が出ると、NHKと民放連のガイドラインの担当者は、「これは受動的な問題ではなく、皆で考えていくべき問題なので、それぞれ自らが主体的に入手を申し出たり、局に取りに来てほしい」という旨の発言をされていました。これはこれで一理あるかもしれないと思いましたが、今現在はどうかというと、風化の一途をたどり、ただ機械的に自主規制しているのみといった印象が見受けられます。 その懇談会が開かれてから5年後の、2003年7月8日午前、島根県松江市中学校の体育館で、ビデオ映像を見ていた1年生285 人のうち36 人がめまいや吐き気,頭痛などの症状を訴えて市内の病院に運ばれるといった事態が起きました。体育館内は、窓を閉め切って、蒸し暑かったそうですが、年々、家庭用ビデオの機能が向上し、画質がクリアでシャープになる一方、誰でも気軽に、手ブレやズーム(zoom)、パン(pan)などによる撮影が行えるようになった事にも注目したいと思います。 2006年11月2日午後2時半ごろ、三重県四日市市平尾町私立メリノール女子学院中・高等学校の体育館で、大型スクリーンの映像を見ていた生徒らが次々とめまいや吐き気などを訴え、50人以上が不調を訴え、救急車で病院に運ばれる事件が起きました。 映画の後半は、やはり手ぶれを多用した映画のようでした。ようするにジェットコースターの最前列に乗っているようなものだったと想像します。 2007年には、映画「バベル」のディスコシーンの激しい点滅のシーンを見て、観客の一部が体調不良を訴えるという事がありました。 以下の文書は、1998年3月に配布された図解入りのガイドラインです。現在、この図解入りの文書は、誤解を招くためなのか、理由はわかりませんが、その後、一般的には配布・公開されていないようです。現在、公開されているのは文字情報のみです。 こうして図解入りで見てみると、かつて遊びの博物誌やアートとして存在した「流動絵画」「流動文様印刷」「永久運動絵画(Perpetual Mobile picture)などとも良く似ています。たとえばパリ在住の画家・イスラエル・レビアンの「走行の錯視(Traffic Illusion)」(1981年)という作品は、多くの細い線が均一に並んでいるのですが、これが、錯覚的な動きを生み出すので話題になりました。それがひとたび映像に置き換えられると、問題となる場合があります。静止したエスカレーターを上り下りすると軽いめまいが起こるのは、エスカレーターの細かい縞状の溝が原因である事が、国内の研究機関の実験で明らかになっています。 (その2に続く)
by anirepo
| 2010-04-11 01:30
| アニメの知識
|
ファン申請 |
||