04年 11.30 “だれがつくるの？日本のアニメ” 集会の報告（１）

アニメ集会に８８名参加で熱気！
　
いま、日本のアニメはバブル状態です。
　週に９０本前後のテレビアニメがラインナップ。アニメーターの人手不足が深刻で、動画や着色は作業は、中国、韓国、フィリピンへと海外流出。それでも音声収録時には絵が間に合わず、未完成な画面に向かって音声を吹き込む白味線撮り状態が蔓延しています。

このままでは日本のアニメがだめになる
　危機感を抱いたアニメの制作者たちは、昨年(04年）の11月30日夜に忙しい合間をぬって集会を開催しました。主催は、通称“アニメコン”と呼ばれる「アニメの明日を考える懇談会〈映産労、映演アニメユニオン、東映動画労組、アニメ事業者協会、日俳連外画動画部会〉」で、アニメプロダクション経営者、プロデューサー、アニメーター、演出家、声優、放送局に働く人々のさまざまな組合が参加する懇談会です。
　当初、業界が猛烈に忙しい中での集会とあって、参加者が少ないのでは…と危ぶまれましたが、アニメ事業所４０社へのチラシ配布、１００社への集会案内の郵送、電話やメールでの誘いなどの甲斐会って８８名もの参加者があり、久しぶりに熱気ある集会となりました。

スタッフを大切に！
　集会は、ものづくりをするスタッフを大切にすることこそアニメーションの振興につながることを基調にすすめられ、声優たちを代表して日俳連の池水通弘氏が声優たちの権利を認めようとしない日本アニメーションを訴え、勝利しつつある裁判闘争を報告。
　つづいて、白味線撮りでの音声収録（アフレコ）風景を、ベテラン声優の野沢雅子さんをはじめ、田原アルノ、柳沢三千代、福島おりね、川中子雅人など日俳連の声優さん方と演出家の原田浩さんが登場して再現。絵のない白い画面に向かって声を当てる異常な光景に、会場から驚きの声が上がりました。野沢雅子さんたちは「できれば声を当てたくない状態」「昔、ルパン三世の吹き込みのとき、山田康男さんは絵のない画面に怒り『約束がちがうじゃないか！』と怒ってスタジオから出て行ってしまった」「絵のあるちゃんとした状態で声を当てたい。」と、改善を強く訴えました。

衝撃のスライド「だれがつくるの？日本のアニメ」
　集会のメインは「だれがつくるの？日本のアニメ」（４０分）のスライド報告。演出家の有原誠治さんが、アニメーターの青井スミレさんのマンガ「アニメーターのスミレさん」と、1970年代から80年代に発行されていたアニメレポート（映産労アニメ対策委員会編集、不定期発行）の記事や最近の資料を駆使して構成したスライド。それに、柳沢三千代さんたち前出の声優さん方が生で声を当てながら上映しました。
　その内容は、アニメ業界誕生から一兆円産業といわれる今日まで、ものづくりを担う人々が、特にアニメーターたちがいつも大切にされず、企業の外へ外へと追いやられてきた事実を、貴重な資料や証言をもとにして立証するものでした。大手製作会社やキー放送局などが、アニメーターを粗略に扱う一方で、彼らの労苦の成果物である著作権を握って膨大な利益を上げつつ、現場に還元しない実態をするどく告発しつつ、「人間を大切にするアニメ界に立ち返ってほしい」と訴えるものでした。
　会場参加者から「初めて知った」「なぜひどい状態が続いているのかよくわかった」「ぜひ、ビデオで販売してほしい」などの声が多数寄せられました。
　
砂漠に水を流してほしい

　会場からの発言もあいつぎました。
　杉並アニメ振興協会会長の川本征平さん（アトリエローク代表）の発言も衝撃的であり、感動的でした。
「一兆円産業というなら、制作現場にお金を流してほしい。アニメを創造をするのは人間である。その人々が働く現場にお金を流してほしい。砂漠に水を流せば草木が育つように、人材は育つのである。いまのアニメ界は砂漠化している。特に、アニメーターが育たないとアニメは出来ない。わたしは背景を描く美術家だが杉並でその考えを提案し、三年前から杉並区の援助で杉並アニメ塾を開催し、アニメーターの養成を始めた。初年度は３名。去年は４名。今年は６名を養成したが、いま残っているのは4名でしかない。養成している間にやめてゆく。募集に集う人材は全国からすばらしい才能を持った人々だが、賃金の安い現場のことを知る中でやめてゆく。アニメの振興するなら解決方法は簡単なこと。砂漠の中に水を流してほしい。」

　この集会を、インターネットやメールで知って参加したという人が多く、大学生、ジャーナリスト、なぜかフリーターという肩書きも目立ちました。遠くは、九州大分市、名古屋市、神奈川県などからの参加者もいて、ネット社会を実感した集会でした。


04年　11．30　“だれがつくるの？日本のアニメ”集会の報告（２）