その4
経営危機に陥ったアニメ製作会社の危機の要因は、当時は次のように考えられていました。
そのひとつは、画面の図にあるように年ごとに増減をくりかえす番組の受注不安。
その二つ目は、急増した製作会社間の受注競争。
そして三つ目は、作れば赤字を生むという番組製作費の安さでした。
63年の「鉄腕アトム」の製作費が55万円でした。一年後に190万円に値上げするものの、実際の製作費は210万円もかかっていました。いかに安かったかがわかります。
テレビアニメ「鉄腕アトム」の産みの親である手塚治虫氏は、その著書「ぼくはマンガ家」の中で次のように語っています。
「55万ぐらいです。30分もので」というと、明治製菓の人は目をむいて、「そんなもんですか! 」と、安心した。この数字は、現在でも、いや、当時ですら、バカみたいな安値である。だが、これには分けがあった。当時、普通のテレビ劇映画の製作費が4、50万円で漫画映画だけがそれからとびはなれて高ければとてもスポンサーは寄り付かないだろういう思案がひとつ。それに、うんと安い製作費を発表しておけば、よそではそれだけではできないだろう・・・ という計算をたてたぼくは、心で泣いて、赤字覚悟でこういったのだ。
これは残念ながら、ぼくの大失敗であった。(手塚治虫著「ぼくはマンガ家」より)
経営危機に陥ったアニメ製作会社の経営者たちは、その危機突破のために考えたことは、社内から物づくりの人々を追い出すこと。アニメーターたちは、次第に企業の外へ追いやられるようになります。
(つづく)